近視の治療

もくじ

  1. ❶ 近視の進行予防の研究

現在、近視の進行を抑えるための様々な研究が進められています。代表的な方法を説明します。

1) 眼鏡による予防
 累進屈折力レンズ眼鏡(レンズ中心から下方に向かうにつれて連続的に度数を変化させたレンズで、通常老眼の方が使っています)によって近くを見るときの調節を軽減させ、網膜の中心部における焦点ボケを防ぐことで眼軸の延長を抑制する方法や、特殊な非球面レンズ眼鏡により周辺部網膜の焦点ボケを軽減することで眼軸の延長を抑制する方法について、国内外で多くの研究が行われました。学童期において累進屈折力レンズ眼鏡は、近視の進行を抑制(通常の眼鏡やコンタクトレンズ比で平均10~20%の抑制効果)することが判りましたが、抑制効果が小さいため、一般の診療では推奨されていません。非球面レンズ眼鏡については、わが国で多施設共同研究が行われましたが、効果を証明する結果は得られませんでした。
2)ソフトコンタクトレンズによる予防
 多焦点ソフトコンタクトレンズによって周辺部網膜の焦点ボケを軽減することで、眼軸の延長を抑え、近視の進行が抑制されることが複数の報告で示されていますが、未だ有効性を裏付ける十分な科学的証拠(エビデンス)は得られていません。
3)オルソケラトロジーによる予防
 カーブの弱いハードコンタクトレンズを睡眠時に装着して角膜の形状を変える方法で、眼軸の延長が抑制される(通常の眼鏡やコンタクトレンズ比で平均30~60%の抑制効果)ことが多くの研究により示されています。しかし、未だ有効性を裏付ける十分な科学的証拠は得られていません。また適切な処方や管理を怠ると重篤な合併症を起こすこともあります。ガイドラインを遵守して使用することとなっています。
4)低濃度アトロピン点眼による予防
 アトロピン点眼は、毛様体筋の調節を麻痺させて、瞳を大きく広げる効果がある目薬で、小児の斜視や弱視の診断や治療に頻繁に使われているものです。アトロピン点眼には近視進行を抑制する強力な効果があることが判っています。しかし1%アトロピン点眼(通常の濃度)は、副作用として強い眩しさや近くを見たときぼやけて見えるため、長期に使用することは困難でした。
 シンガポールの研究で、濃度を希釈した0.01%アトロピン点眼を1日1回2年間使用したところ、近視進行が抑制され、その効果は点眼を行わない場合に比べて平均50%の抑制、さらに点眼を中止した後も効果が持続することが示されました。低濃度アトロピン点眼は副作用が少なく使いやすい目薬ですが、人によって効果が異なります。現在、日本でも研究が進められており、その効果や使用方法が明確になれば、一般の診療でも用いられる可能性があります。

 以上のように、いくつかの予防的治療法が検討されています。その他にもいろいろな試みや動物実験での仮説が提案されていますが、いずれも臨床でのエビデンスはありません。いずれの方法でも、その効果と安全性については、今後さらに長期的かつ大規模な臨床研究を行って確認する必要があります。

参考文献
  1. 所 敬、大野京子.近視:基礎と臨床.金原出版、2012年
  2. 所 敬.屈折異常とその矯正.第6版.金原出版、2014年
  3. 学童の近視予防アップデート.稗田 牧、木下 茂 編、あたらしい眼科 33 (10)、2016年
  4. こどもの近視進行予防.不二門 尚 編、眼科グラフィック 5 (2)、2016年

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